「一生このまま」は危険?ライフステージ別・保険の考え方
結婚、転職、妊娠・出産、住宅購入。20代〜40代は、数年単位で生活が大きく変わりやすい時期です。だからこそ、「昔入った保険をそのまま」「勧められたまま」にしていると、いざという時に足りなかったり、逆に払いすぎて家計を圧迫したりしがちです。
この記事では、難しい言葉をできるだけ使わずに、ライフステージ別に“今のあなたに必要な保険の考え方”を整理します。読み終える頃には、何を残して何を減らすべきか、夫婦で話し合うための軸が手に入ります。
「一生このまま」の何が危険?保険は“今の生活”に合わせて見直すもの
保険は、気持ちを安心させるためのものでもありますが、本質は「起きたら家計が一気に崩れる出来事」に備える道具です。ところが、ライフステージが変わると、守るべきものと必要な金額が大きく変わります。
たとえば、子どもがいない共働き夫婦と、子どもが生まれて片方の収入が減る家庭では、必要な保障額が違って当然です。にもかかわらず、加入時のままにしていると、次のようなズレが起きます。
- 子どもが生まれたのに死亡保障が小さく、教育費や生活費が不安
- 住宅ローンを組んだのに、保障の重複で保険料が高止まり
- 独身時代に入った貯蓄型保険が家計を圧迫し、貯金が増えない
- 医療保険を手厚くしすぎて、肝心の生活防衛資金が作れない
大切なのは「保険を増やすこと」ではなく、「必要な部分にだけお金を振り分けること」です。見直しは、不安をあおるためではなく、家計の無駄を減らして安心を作る前向きな作業だと捉えてください。
まず押さえる:保険で守るのは「大きな出費」と「長引くリスク」
保険を考えるときは、優先順位があります。ポイントは次の2つです。
保険が向いているのは「確率は高くないが、起きると大きいこと」
たとえば、入院の差額ベッド代や通院交通費など「あると助かる出費」はありますが、少額で済むことも多いです。一方で、死亡・重い後遺障害・長期の就業不能(働けない期間が長引く)などは、家計へのダメージが大きくなります。ここをまず押さえると、保険選びがブレにくくなります。
公的制度を知ると、民間保険の“買いすぎ”が防げる
日本には健康保険や高額療養費制度など、自己負担が青天井になりにくい仕組みがあります。つまり「医療費が怖いから、とにかく手厚く」という発想だと、必要以上に保険料を払ってしまうことがあります。
一方で、生活費そのものが減るリスク(働けない、家計を支える人に万一がある)は、公的制度だけでは不足しやすい分野です。ここを民間保険で補う、という順番が現実的です。
ライフステージ別・保険の考え方(20代〜40代夫婦向け)
1)結婚したばかり・子ども未定:まずは「最低限」と「貯める力」
この時期は、生活が整っていないことも多く、固定費が増えすぎると貯金が作れません。優先は、万一のときに相手が困らない最低限の保障と、病気やケガで働けない期間の家計ダメージへの備えです。
- 死亡保障:葬儀代+当面の生活費を目安に“必要最低限”
- 医療保障:入院日額を厚くするより、まずは家計の予備費を確保
- 働けないリスク:貯金が少ない場合ほど検討価値が高い
ポイントは「保険で貯めようとしすぎない」こと。保険料が重いと、現金の貯蓄が進まず、急な出費に弱くなります。
2)妊娠・出産を考え始めた:必要なのは“今増やす”より“不足の確認”
子どもを考え始めたら、焦って大きな保障に飛びつく前に、現在の保障内容と家計の耐久力を確認しましょう。出産後は働き方や収入が変わる可能性が高く、保険料の負担感も変わります。
- どちらかが働けなくなった時、何カ月生活できる貯金があるか
- 死亡保障が「子どもがいる前提」になっているか(不足していないか)
- 医療保障は、必要以上に保険料をかけていないか
「今の生活+将来の計画」に沿って不足分だけを足す。この順番が、後悔しにくい選び方です。
3)子どもが生まれた:死亡保障は“期間限定で厚く”が合理的
子どもが小さいうちは、教育費と生活費の両方がのしかかります。この時期は、家計を支える人に万一があったときの必要額が大きくなりやすいです。
ただし、子どもは成長し、いずれ独立します。つまり、死亡保障を「一生分」厚くする必要はありません。必要なのは、子どもが小さい期間に手厚くし、手が離れたら減らす設計です。
- 必要な期間だけ保障を厚くする(子どもが独立するまでなど)
- 教育費の準備は、保険だけに頼らず家計の積立も併用する
- 共働きなら、夫婦それぞれの役割(収入・家事育児)も加味する
4)住宅購入・ローン開始:保障の“重複”を整理するチャンス
住宅ローンを組むと、多くの場合は団体信用生命保険(ローン返済が免除される仕組み)に加入します。これにより、万一の際の「住まいの支払い」は軽くなるため、死亡保障を同じ感覚で持ち続けると重複しやすくなります。
ここは見直しの好機です。住宅費がカバーされるなら、残りは生活費と教育費をどう守るか、に焦点を当てられます。
5)40代に入った:健康リスクより先に「家計の固定費」を点検
40代になると健康への意識が高まり、医療保障を増やしたくなる方も多いです。ただ、保険料が上がりやすい時期でもあります。ここで大切なのは、気持ちで増やすのではなく、家計全体のバランスで判断することです。
- 保険料が家計を圧迫していないか(固定費が増えすぎていないか)
- 子どもの成長に合わせて、死亡保障を減らせるタイミングはないか
- 貯蓄が増えてきたなら、保険で備える範囲を小さくできないか
保険は「貯金が少ない時ほど必要で、貯金が増えるほどシンプルにできる」傾向があります。今の資産状況に合わせて、守り方を更新しましょう。
やるべきこと:失敗しないためのチェックポイント
見直しで失敗しないコツは、商品選びより先に「家計の設計図」を作ることです。次の順で確認すると迷いにくくなります。
チェック1:いまの生活費を数字で把握する
- 毎月の生活費(住居費、食費、教育費、通信費など)
- ボーナス頼みの支出がないか
- 最低限いくらあれば生活が回るか
チェック2:貯金で何カ月持つか(生活防衛資金)
目安として、貯金で数カ月分の生活費が持てるだけでも、保険に頼りすぎない家計になります。ここが薄いのに保険料が高い場合は、順番を入れ替えたほうが良いことがあります。
チェック3:必要な保障は「いつまで」「いくら」を決める
- 誰のための保障か(配偶者、子ども、親など)
- いつまで必要か(子どもの独立、住宅ローン完済までなど)
- いくら必要か(生活費の不足分を中心に考える)
チェック4:「入ったまま」の保険を棚卸しする
保険証券やアプリで、保障内容と保険料を一覧にします。複数加入している場合、同じリスクに重ねて払いすぎていることがよくあります。
チェック5:見直しは“解約ありき”ではなく、段階的に
新しい保障が必要な場合は、原則として加入の目処を立ててから整理します。焦って解約すると、健康状態によっては入り直しが難しくなる可能性もあるため、順番は慎重に。
よくあるQ&A(元本割れ・いくらから・見直し頻度など)
Q1. 貯蓄型保険は元本割れが怖いです。どう考えればいい?
元本割れは「途中でやめた場合に起こりやすい」点が大事です。長く続ける前提の商品でも、ライフステージが変わりやすい20代〜40代は、途中で見直したくなる可能性があります。
貯蓄目的があるなら、まずは生活防衛資金を現金で確保し、そのうえで「何年は使わないお金」と割り切れる範囲で検討すると失敗しにくいです。不安が強いなら、保障は保障、貯蓄は貯蓄と分ける考え方も有効です。
Q2. 保険はいくらから始めるべき?
金額の正解は家庭ごとに違いますが、まずは「家計を圧迫しない固定費」に収めることが最優先です。保険料が重いと、貯金や教育費の積立が止まり、結果的にリスクが増えます。
迷う場合は、最低限の保障からスタートし、子どもの誕生や住宅購入などの節目で必要分だけ上積みするのが現実的です。
Q3. 医療保険は手厚いほうが安心では?
安心は大切ですが、手厚さがそのまま家計の強さにはつながりません。医療費には公的制度があり、自己負担が一定以上になりにくい仕組みがあります。まずは貯金で対応できる範囲を増やし、本当に不安な部分だけ保険で補うと、ムダが出にくくなります。
Q4. 見直しはどれくらいの頻度がいい?
毎年細かく変える必要はありませんが、次のタイミングでは点検をおすすめします。
- 結婚・出産・転職・独立など働き方が変わった
- 住宅購入、引っ越し、ローンの開始・借り換え
- 子どもの進学、教育費が本格化する時期
- 家計の貯金が増えた/逆に減った
Q5. 夫婦で意見が合いません。どう進める?
好みで決めようとすると揉めやすいので、「どんな出来事が起きたら家計が詰むか」を一緒に洗い出すのがおすすめです。そこから、必要な保障を“期間限定で”持つ、と決めると落としどころが見つかりやすくなります。
まとめ:保険は「固定」ではなく「更新」する家計の道具
保険は、一度入ったら終わりではありません。家族構成、収入、住まい、将来の計画が変われば、必要な保障も変わります。「一生このまま」で安心できる人は、実は多くありません。
最初の一歩は、難しい比較よりも、今の保険を“見える化”することです。保険証券を並べて、毎月いくら払っていて、何がどれだけ守られているかを夫婦で確認してみてください。そのうえで、「いつまで」「いくら」「誰のために」を決め、必要な部分だけ整える。これが、家計を守りながら将来の選択肢を増やす、いちばん堅実なやり方です。
もし一人で判断が難しければ、家計の全体像(貯金・生活費・働き方・将来の予定)から一緒に整理できる相談先を活用するのも有効です。保険は怖がるものではなく、人生の変化に合わせて味方につけるもの。今日できる棚卸しから始めましょう。
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